暗闇コンチェルト 1

 裏庭には大きな楠の木が植わっている。二階の高さも、屋根裏の高さも過ぎて、恐らく屋根の先にも枝は掛かっていると思った。
年季の入った丸太のような枝には、扇を幾つも重ねたように濃い緑の葉がわんさと茂り、それは小夜の寝泊まりする部屋まで伸びている。
この楠は店ができるずっと昔からあったのだそうで、店の番頭なんかは勝手に商売繁盛の御神木だとのたまっていた。
小夜の部屋はその大きな楠の枝へとすぐに飛び移れそうな位置にあった。軒に張り出した板の間から手すりへ片足を掛けて、弾みをつければ枝にもう片方の足が確実に届く。
小夜は何度、この木の太い枝をつたって店から逃げようと思ったか分からない。
しかしいつも思ってばかりで、流れに身を任せ、つながれた様にしてこの場所から離れることはしなかった。

 楠は常緑樹であるからいつでも生い茂る葉によって小夜の部屋の中は薄暗かった。この鳥かごのような部屋はその大樹のせいであまりにも太陽光が入ってこなさ過ぎた。
店の雇い人も、日が沈んでからしか蝋燭を持ってこないから日中は本すら読めないし、文字も書けない。
もっとも、読み書きできない他の姐さん方に云わせればそんなことは対した問題では無かったから特に不満も出ていない。むしろ昼間は薄暗い方が良く眠れるし、夜に響かないからいいと言っていた。

 裏庭には大きな楠の木が植わっている。二階の高さも、屋根裏の高さも過ぎて、恐らく屋根の先にも枝は掛かっていると思った。小夜は、客のない日中には手すりに腕を乗せ、派手な襦袢一枚だけ羽織って、いつもだらしない姿で葉の隙間から零れる少しの木漏れ日を浴びていた。
天気の良い日はきらきらと小さな光が揺れて、風が吹けば枝々の合間から青い空がちらりと覗く。
しかしそんな天気の良い日でも、鬱蒼とした葉で部屋の中は薄暗い。
小夜は何とか読書をしたい一心で、窓辺にぎりぎり寄り、毎日少しずつ文字を目で追っていた。その甲斐あってか、次第に暗がりの中でも夜目が利く様になって、薄暗い中にある人の影や物の輪郭は、人よりも判断がつく様になっていた。
これも一人の暇つぶしで体得したものだった。
今日もかれこれ一刻半ほど読み続けていた。長い間、下を向けていた首をゆっくりとまわしてうんと背伸びをして、茶でも取りに行こうと、部屋を出て水屋に向かった。




小夜は七歳の時にこの「樟月楼」にやってきた。
それまでは山間の小さな村に住んでいて、母と兄四人と暮らしていた。小夜は末っ子でただ一人の娘だった。
山間部では気温の差が激しく平らな土地も無く、十分に米も育たなかったために、少しでも収入源になる山の物が小夜たち家族の生命線だった。明けても暮れても育つかも分からない農作物の世話をし、山菜や薬草を採っては街へ売りに行っていた。


 ある日、いつもの様に街へ母親と共に行商しに行った小夜は、一人で露店の番を頼まれ、何束か薬草を売ったが、帰る時刻になっても一向に母親は戻って来ずに、代わりに現れたのは樟月楼の現番頭だった。


「お前の母ちゃんはもうここに戻って来ることはねえ」


番頭にそう言われて訳も分からず連れて来られた、賑やかな街の一角にある遊女屋樟月楼がこの日から小夜の家になったのだ。
最初は下働きで、店の掃除や姐さんたちの身の回りの世話が殆どだった。
数年姐さんがたの世話係りが続き、小夜も徐々に女性らしい体つきになると、いよいよ番頭から座敷に出るように言われた。
母にも見捨てられ、小夜にはもう身よりは居ない。どんな仕事も嫌とは言えずに、小夜は番頭の言う事に従った。
しかし小夜は座敷に上がってから一月もしないうちにたちまち店で三本の指に入る程に客を取る様になっていた。
小夜は肌も白く、初々しいし、何より若い。よく金を落とす商人なんかは、そんな奥床しさにひかれて足繁く樟月楼に通った。

その小夜を指名する客の中に、風魔小太郎という自称、呉服屋次期当主であるという大変無口な男が居た。
小太郎は一年ほど前から樟月楼の常連であったが、非常に羽振りがよい客で、いつも花代とは別にいくらか包んで姐さん方は貰っているらしかった。貰っているとは言っているが、本当は強請っているのを小夜は知っていた。
一方の小夜は小太郎から座敷に指名されることは無かった。
正直そんな難しそうな無口な男のどこがいいのかさっぱりだったし、花に群がるのは蝶ではなく蛾なのだと少しばかり姐さん方を軽蔑していた。

それがどういった風の吹き回しか、ここ三月ほど毎晩のように樟月楼にやってきては小夜は小太郎に呼ばれていた。
ただ、この小太郎は小夜を指名しているにも関わらず、同じ部屋に男女が居るというのに、全く会話が無く、小夜の手に触れることすらしない。
姐さん方はいつもどんな風に接しているのかと不思議でならなかった。
小太郎は小夜の部屋へやってくると半時ほど居座って、少しの酒と漬物を食べ、窓辺に寄りかかって勝手に寝てしまうのだ。
そして時間が来ると、その呉服屋の手代が迎えに来て帰るといった、何とも変な男だった。
他の客なら高い金を払うのだからと、随分派手に遊ぶといった所だが、そんなことは一度も無かった。
仮にも小夜はこの樟月楼で三本の指に入るほどの遊女だ。
他の客からお呼びが掛かるのも姐さん方よりも多いし、小夜にだって始めの頃よりも随分と手慣れていると自負している。わずかながらプライドもあった。
自分を指名しておきながら、何にもないとはさすがの小夜も自尊心を傷つけられた気持ちになった。
しかし小夜はふと思い立ったのだ。小太郎が来るこの時間は蝋燭の明かりがある。いくら夜目が利くようになったとはいえ、昼間薄暗い時分よりもやはり明かりのともった時に本を読んだ方が随分いい。
そう思った小夜は、ある日小太郎に


「接客中ではありますが、風魔の旦那とは会話も何もございません。私は旦那が一人で酒を飲んで、漬物を頬張るのをただ見ているだけです。何かあればすぐにお声を掛けて頂いても構いませんから、灯りの傍で本を読ませてもらってもよろしいでしょうか?」


と、思い切って訪ねてみたのだ。すると小太郎は静かに首を縦に振って、また一人で酒を飲み勝手に寝てしまった。

それ以来、この無言の空間は小夜に取っては束の間の休息時間になっていた。次の客があるまでは半時程息抜きの時間がある。その点に於いて言えば、小太郎に感謝をしていた。





水屋で茶を入れてもらい、小夜は続きを読もうと階段を上り自分の部屋へ向かった。今日もまた小太郎は来るのだろうかと考えながら、戸を引くと、隣の部屋の姐さんと鉢会わせた。


「あら、小夜。さっき、あんたの客が番頭と話してるの聞いちまったんだけど、あんたを引き取りたいって、いくら払えばいいかって銭の話してるの聞いちまってねえ?ふふふ。その旦那、何でもお武家様らしいよ?そんな御人に引き取られるなんてあんたも羨ましいったらないよ」


あーあ、あたしも早く外へ出たーい。そう、姐さんに言われた。

小夜は姐さんのその言葉に、正直鳥肌が立った。
恐らくその客は樟月楼に金を積んで小夜を妻に迎えたいと番頭に掛け合っているのだ。
それはこの樟月楼から出られるということだった。
しかし今ですら毎晩、毎晩、違った客の相手をして、それが店を出てからも誰か一人の為に続けるなんて事は小夜には堪え難かった。
樟月楼に小夜が居るには、それをするしか生き延びられないから仕方なくやっている事で、外に出てまで自分が愛しても居ない男とそんな事はしたくないと思っていた。
春を売って金になってもこの鎖を断ち切る斧はいっこうに買えない。
小夜はただ何者にもとらわれたくないのだ。気ままに本を読んで、少しの文字で一日の事を記せるならと、そう毎日毎日思いを馳せていた。



部屋に戻った小夜は窓際に寄って、うっそうと葉の茂った楠をじっと眺めた。
楠の樹幹に近い所は、昼間だというのに覆う葉によってますます薄暗い。その中心に枝が吸い込まれる様にして続いている。
自分を娶りたいという客は誰だろうと考えた。武士の客は相手をした事があったかと考えたがどうも思い出せなかった。
ただ、小夜が今抜ければ恐らく店にとっても損失は免れない。番頭は上手く断ってくれるだろうと思っていた。
小夜は茶を一口飲んでため息をついた。手摺に身体を預けながらぼうっと楠を眺めていると、ふとその幹の中心で何か黒い影が動いた。
しかし、枝と枝が重なってその輪郭がはっきりと掴めない。暗がりの中、物を見る事はわりと得意になった筈であるのに、枝が邪魔をする。
小夜は少し気味が悪くなって、何度も目を凝らしたが、大きめの黒い影ということしか分からなかった。きっと太い枝なのだと思って、小夜は店が開くまで昼寝をする事にした。





夜になって小夜には客が来た。呉服屋の小太郎だった。
小夜はいつものように小太郎に酌をした後、灯りの近くに寄ってひたすら文字を目で追う。
しかしなかなか集中できないでいた。“小夜を引き取りたい客がいる”との昼間の姐さんの話しが頭の中を駆け巡っていた。
小太郎が漬物を頬張る音が部屋に聞こえる。蝋燭の灯り越しに小夜は小太郎を見遣った。
いつでも自分は何かにつなぎ止められるだけなのかと、繋がった鎖はいったい誰が握っているのかと小夜は小太郎が漬物を頬張るのを見ながら考えた。
灯りにしている蝋燭に、その鎖は断ち切れないのだと、その揺れる火は小夜をあざ笑っている様な気さえした。
ぼうっとその蝋燭を眺めていると突然風が吹いたようにその火が大きく揺らいだ。小太郎が急に窓の近くへ移動して、楠の一点を凝視している。
小夜には心当たりがあった。昼間のあの黒い影だ。しかし、こんな夜に小太郎もその影が分かるのかと不思議に思った。


「風魔の旦那、もしかして旦那にも楠に何か居るのわかります?」


小太郎はゆっくりと首を縦に振った。


「何でしょうね?気味が悪いのは確かなんですけど、昼間もあの薄暗い楠の中にあったんですよ」


すると、小太郎は驚いた様子で小夜の手首を勢い良く掴み、距離を縮めた。小夜の目の前にはこれまでに無いほど、小太郎が近い。普段手も握らない小太郎の行動に小夜は目を瞬いた。
小太郎の前髪は普段から顔が覆われていて、その奥を見たことは無い。赤毛からちらと覗いたその鋭い眼光に小夜は一瞬飲み込まれそうになった。
腕を放した小太郎はまたいつものように壁に寄りかかって、何事も無かったかのように酒を少し口に含んだ。心臓の音が少し煩く感じていたが、小夜もまた灯りの近くに戻って本を手に取った。





翌日の昼、いつも通に外を眺めていると、樹幹に近い所にはまた黒い影があった。
小夜は思わず体を手すりに乗り出して見たが、それはばさばさと音を立てて飛び立って行った。
ただのカラスだった。
しかし、カラスというよりは鷲とかそれ以上の大きさの様に思えた。
小夜は少し落胆したのも事実だった。なんだ、カラスかと、黒い影に非日常を期待する事など馬鹿げている。
それからというもの、その黒い影が大きなカラスだと判明した小夜は、昼でも夜でも楠に留っているのを幾度と無く見た。
特に夜、小太郎の相手をしている時はその枝に留っている事が多い。小太郎も最初の頃は、その黒い影を大分気にして居た様子だったが、近頃は置物のように思っているようで、興味を示さなくなった。
小夜もきっとこの大きな楠はカラスの巣なのだと思った。

ある日、小夜は風呂から戻って部屋の戸を開けると、そのカラスが小夜の部屋に一番近い枝に姿を現していた。今まで影でしか見た事の無かったカラスが今目の前に現れたのだ。
カラスは小夜の上半身程の大きさで畑にいるものよりも何倍も大きかった。
小夜は部屋の入り口に立ったまま遠目に観察したが、カラスはなんとなく様子がおかしかった。
恐る恐る近づいて、いつもの定位置である窓際に寄り、とうとうカラスに手が触れられそうな距離になった。
小夜は枝を見てぎょっとした。
枝にはカラスの足の付け根の部分から、どす黒い血がべっとりと付いて、樹皮にしたたっている。
こんなに大きな体では猟師や鷹狩りの的にされやすいのだろうか、刺さった矢は矢じりの部分とほんの少しの矢柄の部分しか残っていない。痛々しいその光景に我慢できずに小夜は思わずカラスに声をかけていた。


「お前さん、怪我してるのかい?ほら、こっちにいらっしゃいな。手当してあげるから」


すると、カラスは小夜の言葉がまるで分かるかのように、手すりに飛び移ってさらに部屋へ入って畳に着地した。
小夜はその大きなカラスの頭をそっと撫でた。毛並みは飼い猫よりもよく、黒い羽は一本でも飾りになりそうな程に光沢を伴って美しかった。
カラスを落ち着かせた小夜は、足に刺さった矢を勢い良く抜いた。
羽を部屋一杯になるほど大きく広げて暴れたが、それも矢を抜いた瞬間だけで、その後は大人しくなった。
意外と傷は浅く、薬を塗れば自然に治るのではと思った。
小夜には薬草の心得は少しはある。番頭に言って、キズと滋養に良さそうな薬草を指定し、雇い人に買いに走らせる様に頼んだ。
そんなもの何に使うんだと怪しむ番頭に小夜は「今夜が勝負どきなのさ」と耳元で囁いて番頭の追求をかわした。


小夜はその後、昼間にカラスを部屋に招いた。
いつもは楠に留っているが、小夜が呼ぶと枝のぎりぎりまで寄ってくる。
近頃、幾度となくお武家様の縁談は、二日置きに耳に入っていた。どうやら交渉に来ているのはその武家の使用人らしい。
その話しを番頭にされる度に参っていた小夜は、勝手ながらカラスを心の拠り所としていた。
突如現れたこのカラスに小夜は友達が出来た様で嬉しかったのだ。
カラスは頭がいいと聞くが、特にこのカラスは賢く、人の言葉が分かるようだった。
小夜の言葉に時折頷く様にして首を大きく振ったり、嬉しい時にはぴょんぴょんと畳の上を飛んでいる時もある。
時折カラスは、部屋から出られない小夜に花を摘んで来てくれたり、側に寄り添って一緒に読書をしたこともあった。
夜になるとカラスは、小夜が仕事の時間であるのを認識しているのか自ずと楠へ帰って行く。何と賢い事かと思っていたが、カラスは楠からじっと接客中の小夜を見ている様にも思ってカラス相手に少々気恥ずかしくもあった。


昼にカラスが来れば夜には小太郎が来る。
カラスが現れてから十日目を過ぎた晩のことだった。ここの所、窓からカラスが楠の奥に居るのが見えても、小太郎は気にせずに過ごしていたのだが今夜は違った。
小太郎は部屋へ入るなり、カラスをじっと睨んでいたのだ。


「風魔の旦那?どうなさいました?」



小夜が声をかけると小太郎はいつもの定位置へ腰を下ろした。
毎回同じ段取りで、酌をして、小夜はまた読書の時間になるとそう思っていたのだが、小夜が明かりの近くへ移動しようとすると、小太郎は小夜の腕を取って珍しく制した。


「旦那、何かあったんですか?」


小夜も今まで引き止められることなど無かったから、小太郎は呉服屋で何か気が沈む様な事でもあったのかと思った。
小太郎はそうではないと首を横に振って、燭台をわざわざ近くまで寄せた。
どうやら、隣で本を読めという事らしかった。


「そんなことならもっと早く言ってくれてよかったのに」


小夜は小太郎の言う通りに隣へ腰を下ろした。珍しく客の注文に嬉笑したかも知れない。
外はそれほど強い風が吹いたわけでもないのに、本を読む小夜の耳には葉の擦れる音が大きく響いていた。葉と葉の間からは月と無数の星が見え隠れしていた。

それからの小太郎と過ごす夜は、実に穏やかだった。
同じ部屋に居るというのに、隅と隅に互いに離れて座り、思い思いに過ごしていたのが、ぐんと距離が近くなった様に思えた。
本を読む小夜は勝手に小太郎へ身体を預け、小太郎も何も求めずに、感じる人の体温が小夜には実に新鮮だった。他の客との肌同士が触れ合っての体温ではなく布越しでのそれは幼い時に母に抱かれたものと似た暖かさだった。
随分とこの空間は安心できて心地のいいものだった。
大きく深呼吸した小夜にはそれがまだ何かは分かってはいなかった。
ゆっくりと時間が過ぎる中、着実に小夜が樟月楼を離れる日が近づいていた。




ある日、小夜は番頭から呼ばれた。
とうとう、例のお武家様に番頭は折れてしまったのだ。小夜は樟月楼から出て、好きでもない男の妻になるよう命じられた。
番頭のいい分はこうだ。


「お前が妻に行ってくれたなら、お武家様から多額の金が入る。お前がこの店での一月分の稼ぎの十倍の額を言ってやって追い返そうとも思ったんだが、それをあっさり飲んじまいやがった」


番頭から話しを聞かされた小夜は部屋で一人、気が抜けた様にして窓辺に寄って楠をながめた。
それを察したのか、羽を広げたカラスは慰める様にして小夜の肩をさすった。
気落ちする小夜にカラスは何度も頭をこすりつけて、羽を動かした。
その時に、小夜はそのカラスの羽の内側に紋の入った布が縫い付けられているのを見たのだ。赤い布に金糸で六つの丸い銭のようなものと、その裏には菱形が四つ刺繍されていた。
小夜はそれを見てこのカラスが他のものより大きく、人の言葉がわかるのも、きっとこの刺繍を施した飼い主がこのカラスを特別に育てたのだと思った。
毛並みも良いし、こんなにも頭がいいカラスのことを、きっと飼い主は今か今かと帰りを待ちわびているかも知れない。


「お前には飼い主がいるの?いつでも帰ってくれてよかったんだよ?」


その問いにカラスは首を横に振った様に思った。
小夜はカラスに帰れない事情でもあるのかと思った。さすがに小夜はカラスの言葉までは分からない。縁談が決まってしまえば、このカラスとも別れなければならなくなる。
小夜はカラスに家へ帰る様に説得した。


「いいかい?私は今からあんたのご主人に文を書く。あんたが今まで帰らなかったのは怪我をしていて長い間動けなかったってそう書けばいい。実際、そうだったんだから。それから、薬草も一緒に付けてやるから、それ持って早く帰んな。文を持って帰れば主人も分かってくれる。きっとあんたのご主人は心配してるよ」


そう言って、小夜は急いで筆を取り薬草と共に文をカラスの足に括り付けて、別れを言った。


「ありがとう。短い間だったけど楽しかったよ」