07.花びらは舞い落ちる

 暫く彼女について居ると、己もいつの間にか船を漕いでいたらしい。気づけば目の前には名前が座っていた。随分と顔色は良くなっている様子だ。平気かと問えばはいと首を傾げて笑っている。大分気分も優れているらしい。

「何だ、もうすっかり陽ぃ沈んじまったな」

 女中が部屋に明かりを灯してくれたのだろう。名前の枕元は柔らかい光に包まれていた。障子の向こうの濡縁も所々明かりが揺れている。大きなあくびをつき、うんと背伸びをして後ろ手に手をつくと、唐突に名前は板間に指をついて頭を下げた。

「政宗様…、一昨日の、仕切り直しを…、今一度お頼みしてもよろしいでしょうか…」

 なんだって、そんなに萎んでしまうような言葉尻なのかは分からないが、こんなにも従順で可憐だと政宗は思わずぷっと笑いがこみ上げた。輿入れにしても事実上は人質であるのに、何でかとんとん拍子に進んだことを不思議に思っていたのだが、名前はどうにも己に正直すぎるらしい。人質然としてこの城にやってきたのだ。それ故にいざ政宗と床を共にするとなれば、怯えて逃げたのだろう。そう考えればこれまでの天真爛漫さにも納得が行く。しかし心を決めた名前からのせっかくの申し出を断る理由はどこにもなかった。

「病み上がりの割りにそんな事言っていいのか。加減できねえかもしれねえぞ」

 その言葉に顔は強張っていたが、これも彼女なりに考えたけじめの付け方の様だった。決意を込めてぎこちなく頷くと、政宗は長い黒髪に指を通し首に手を滑らせた。くすぐったそうに、名前は肩をすくませる。緊張しているようで両手をしっかり膝の上で握っていた。政宗は手を重ね、ゆっくりと解く。名前の指に己の指を絡ませ、顔を彼女の耳元へ寄せた。

「なぁ、いつもどっちの手で弄ってた?」

 名前はかぁっと、顔が火を吹きそうな程熱くなった。思わず政宗から遠ざかろうとしたが、即座に腕が腰に回されて逃げ場はない。目に一杯涙を溜めるも、いいやここは泣いてなるものかと堪えていると、慌てて政宗が「わ、悪かった」と宥めた。数刻前にあられもない姿を晒したとはいえ、流石に意地悪が過ぎる。そうこうしている間に、いつの間にか名前は政宗に抱きかかえられ褥に横たわっていた。見下ろす政宗は、見定めるかのように少しずつ寝間着を脱がせていく。露わになった名前の素肌は滑らかで行灯の明かりを綺麗に吸っている。手を這わせばいつまでも触っていたい心地になった。
 行き来する政宗の大きな手のひらは、名前を今に喰らわんとするかの様で、荒々しく胸を揉まれ、先端を執拗に弄られる。手を動かしながら政宗は名前の顔を眺め楽しんでいる様子だ。じっと見つめられれば次第に芯は熱を帯び、身動ぎする名前を政宗は押さえつけ唇を奪った。音を立てて舌を吸い上げ、名前の呼吸をかき乱す。苦しそうに息継ぎをするが十分に余裕を与えてはやらなかった。息の上がるままに彼女の胸を掴んで膨れ立った箇所を甘噛みすると、んっ、と声を押し殺して反応している。今まで随分振り回されてきた政宗は思う存分翻弄してやりたくなった。何度も舌で転がして、吸っては噛んでを繰り返すと名前は膝を擦り合わせ、腰をくねらせている。

「少し前に自分で弄ってたくせにな」

 政宗の右手は脇腹を通って、下腹を通り過ぎ太ももに絡まる袂を剥いだ。膝の間から体を滑り込ませ名前は来る快感を待ち望むが、政宗はしばし上から名前を見下ろして彼女の裸体を見つめている。一頻り堪能し、政宗自身も熱くなったのか着物を脱ぎ始めた。合わせを広げると鍛えられたがっしりとした上半身が露わになる。光があたれば影ができるほど腹も腕も逞しい。傷はひとつもない。

「どうして欲しい?」

 鎖骨に唇を落としながら政宗はわざと問いただす。聞かなくとも名前の望みは分かりきっているのに、腰の辺りに手を行ったり来たりと這わしているのだ。言葉で懇願するのはまだ羞恥がある。考えた名前は、そっと手を伸ばして政宗の手を取り触れて欲しい所まで誘った。まるで感心しきった様な政宗は「褒美をくれてやらねえとな」と呟いて下へ移動したかと思えば、潤んだ芯を口に含み、指を一本ゆっくりと名前の奥へと挿れていく。はぁ、とため息が漏れて名前の中で何度も政宗の太い指が内壁を擦っていく。いいところを擦られれば、腰が自然と動いてしまう。
 政宗は名前の反応を逃さずに、もう一本今度は薬指を増やしてそこばかりを攻めた。中と外と同時に弄られれば、堪らず嬌声が漏れてしまう。察してか政宗は芯から唇を離し、名前の口を塞いだ。何度も深く口付けられ、それでも手は止めてはくれない。達してしまいそうになった時、政宗は指を抜いた。物欲しそうにする名前に己の手を見せつけている。淫らに光り垂れる情欲の雫は直視できない。そのまま政宗は指を乳首に押し当てて愛液を擦りつけ、名前は思わず顔を反らした。

「ぁ、お、やめ下さい…っ」
「やめて欲しいなんてちっとも思っちゃ居ねえくせに…、」

 そう言って政宗は、少々乱暴に名前の腕をとって起き上がらせると、今度は政宗の上にまたがるように命じた。恥ずかしそうに両腕で胸を隠すが、政宗が擦りつけた愛液が明かりにてろてろと光っている。

「本当にアンタ閨事怖がってたのかよ。いやらしいったらねえな、腕はこっちだ」

 政宗は名前の腕を自分の脇腹辺りへ置かせると、腰をあげろと言う。云われるがまま従うと、政宗は己のそそり立った雄を少し扱いた。

「あの、政宗様…」
「なんだ、ゆっくりでいいから自分でして見せな」

 ひたすらに、従順な名前を逆手にとってやりたい放題である。覚悟を決めて名前は欲する熱を咥え込んだ。先はすんなり入るが、そこから腰を沈めるのには勇気が居る。分かっているのだ。今日は侘びも兼ねているからして、只管に奉仕せねばと思っていた。膝の力を抜いて、腰を少しずつ下ろしていく。今に気が飛びそうになった。指でしている時とは訳が違うのだ。太くて温かいものはぴったりと名前に沿って入ってくる。痛みは暫くして心地よくなり、根本まで入った時政宗の胸に雪崩込んだ。力強い腕は逃げるなよとでも言うように、名前の背にきつく回っている。

「…っ、そのままじっとしてろよ」

 束の間、名前は激しく揺さぶられた。熱いものが何度も己を突き上げて、先程政宗が弄った内側ばかりが責められている気がする。不埒な水音が部屋の中に響き渡り、荒い息と交わって欲情が責め立てられる。何度も何度も突かれ名前は頭の中が真っ白になりそうだった。

「っ、、はぁっ…、あぁ、政宗様、勘弁下さい…っ」
「溶けちまいそうな顔してんじゃねえよ…、付き合えよ最後まで」

 政宗にそうは云われたものの、名前は先に気を遣った。震えた身体は政宗にもたれたまま、まだ名前は政宗と繋がったままだ。名前の呼吸も整わぬまま政宗はまた動こうとする。抵抗もできずにその後も政宗の精を受け続けた。


 翌朝、早くに目が覚めた名前は隣で眠る政宗に、昨晩の情事を思い出しては顔を覆いたくなった。
 ただ、こんなにも醜態を晒したにも関わらず侍女を手打ちにもせず、あまつさえ名前の身も案じてくれた。例え名前を娶った事が戦のためだったとしても、こんなにも度量のある武人に囚われたのであれば、自分はなんて幸せ者だろうと思える。

「政宗様、ありがとうございます。名前は精一杯はげみます」

 政宗の額に触れるだけの口づけをして、もう一眠り、と布団に手を掛けた時ふいに腰に腕が周り、彼女は再び政宗に囚われた。

07.花びらは舞い落ちる

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